Blue Murderという爆発物
ロック好きなら一度は経験があると思う。
「車に人を乗せた瞬間、流れている曲が気まずいやつ」。
訳あって、そんなに親しくもないというか、
数分間話しただけの人間を自分の車に乗せることになった。
まあしょうがない。
目的地まで乗せよう。
同乗者は私とほぼ同世代に見える。
車に乗せてエンジンをかけた瞬間――
車内に響く爆音。
しまった。
ここへ向かう途中、無性にRiotが聴きたくなり、
その流れでBlue Murderの1stアルバムを無造作に流していたのだった。
Riotは終わり、
Sex Childのイントロが始まっていた。
慌ててカーステをオフにしようとした瞬間、
「無理やり乗せてもらったんですからお気になさらず」
とのお言葉。
とりあえずボリュームだけ下げると、
サイクスが良い声で歌い始めた。
(※歌詞一部引用)
Baby your lovin’ is driving me insane
I’ve never known such a crazy girl
「これ、あれでしょ?ヘビーメタルってやつ」
「(ハードロックだよ)ええ、まあ…かなり古い曲ですけどね。
うるさいでしょう?止めますよ。」
この時点で、話が合うタイプではないことは完全に理解。
車に乗せる前から薄々気づいてはいたが。
Yeah yeah (Yeah yeah)
Ooh Sex child (Yeah yeah)
「……すごい歌だなぁ(笑)」
「はは、まあロックなんて大概こんなもんですよ。」
Sweet little momma gonna keep you satisfied
Look out!
(この Look out! がいいんだよなぁ)
「普段はあまり音楽とかお聞きにならないんですか?」
「いや、聴くよぉ?最近だとほら…ミセスとか。娘が好きでね」
「ああー(ああー)なるほど(なるほど)いま人気ですものね」
(こちらがBlue Murderなら、向こうはMrs. GREEN APPLEだ。ゴジラvsメカゴジラかな?)
I’ve got a ’57 Chevy with the chrome blown off
「洋楽聴く人って、我々の世代でもたまにいますけど久々にお見掛けしたねぇ」
「(おお、来るぞこれ来るぞ)
そうですねぇ、この歳になると身近にもあまり聴く人いませんね(笑)」
「英語わかってて聴いてるものなの?」
「(きたー!)はは、まあ聞き取れないとこは多いですかねぇ」
助手席の顔は見えないが、まあお察しである。
I’ve been mistreated, woman
「でも、なんか良いですねぇ(笑)
仕事以外に打ち込めるものがあるっていうのは(笑)」
「いやぁー打ち込むとかそういうのではないんですよ。
なんといいますか…そうですね…」
(カーマインとトニーいい仕事してるなぁ)
「回想バンプ、ノスタルジア効果ってやつですね(真顔)。
子供も独立して、ひとりの時間も増える。
仕事以外に何かないのか。
自分には何かなかったか。
そう思って若い頃の懐メロを聴くことで、
当時の万能感や切なさを再体験し、
心理的な報酬を得ている状態。
所謂、心の平穏を求めているわけですね。
まあ…歳なんでしょうね。
っはっははは」
(ギターソロきたああああ)
「…はあー…なるほど(あ、こいつとかかわるのやめとこ)」
「そろそろ到着ですね。
タクシーみたいな乗り心地ってわけにもいかず、申し訳なかったですね(笑)」
「いえいえ、無理言って済みませんでした。
非常に助かりましたよ。良い経験にもなりました(笑)」
彼を降ろしたあと、ネクタイを緩め気兼ねなくボリュームを30まで上げる。
(Yeah, yeah) Gonna slip and slide, come inside, satisfied~
(Yeah, yeah) Oooh, oh, yeah, yeah
もう曲はフェードアウトに入っている。
そんなわけで、
仕事で人に会うときは何が起こるかわからない。
特に
車のオーディオに
Blue Murderのような爆発物を積んでいるときは。
(Yeah, yeah) We’re gonna satisfy…
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